モプティから2時間ドゥエンザの街を左に折れると、荒涼とした潅木の間を1本の道が通っています。四駆車は荒れた道路を時速80km以上で駆け抜け、およそ3時間ほどでニジェール川に到達。
11月-雨季の雨を集めたニジェール川は一年で一番川幅が広くなり、ゆったり水を湛えています。この先にトンブクトゥの街があるはずです。 (街は港からさらに15kmほど先にあります)
モプティから2時間ドゥエンザの街を左に折れると、荒涼とした潅木の間を1本の道が通っています。四駆車は荒れた道路を時速80km以上で駆け抜け、およそ3時間ほどでニジェール川に到達。
11月-雨季の雨を集めたニジェール川は一年で一番川幅が広くなり、ゆったり水を湛えています。この先にトンブクトゥの街があるはずです。 (街は港からさらに15kmほど先にあります)
言い伝えのひとつから・・・
トンブクトゥは11世紀前半、遊牧民トゥアレグのキャンプとして始まる。男達はその井戸の近くに住んでいた女性Bouctouに荷物を預け旅立って行った。後年、トンブクトゥは「井戸」というタマシェク語(トゥアレグの言葉)のTimが合わさり、Tombouctou(ブクトゥの井戸)と呼ばれるようになった。
マンサ・ムーサのメッカ巡礼(1324)とトンブクトゥを訪れた探検家イブン・バトゥータIbn Battuta(1304-1368) の記述は、ヨーロッパに「黄金の都トンブクトゥ」の伝説を誕生させます。この伝説は19世紀まで語り継がれ、多くの人が冒険と野心を掻き立てられました。しかし、1828年4月。憧れのトンブクトゥへの潜入に成功したルネ・カイエRenne Caillie(仏)が見たものは、サハラ交易が廃れ、すっかり荒廃してしまった「静寂に包まれた泥の家の集まり」だったのです。
1988年世界遺産登録。その華やかな歴史と名称から壮大な歴史的建造物を見ようとやって来た旅人が目にするのは、日干し煉瓦やトンブクトゥ石と呼ばれる硬い粘土で覆われた家、そして残された3つの古いモスク(ジンガリベリ・モスク、サンコーレ・モスク、シディ・ヤハヤ・モスク)が点在するさびれた街です。
道はどこを歩いても砂に覆われ、あちらこちらの壁が崩れています。中心を離れれば、どの道も人通りが少なく声もあまり聞こえてきません。
「トンブクトゥに行っても何もないよ」と多くの旅行者もガイドも言います。しかし、バスを乗り継ぎ、はるばるやってきたトンブクトゥを目にした私は、直ぐに気に入りました。
砂の中に溶け込むような家、砂色に華を添える重厚で美しいドア、青いターバンと民族衣装に身を包んだ男達。
そこは開放的で喧騒に包まれた南とは全く違う異国情緒を漂わせた街です。トンブクトゥは、その華やかな歴史を秘め、静かに横たわっています。
ガーナ帝国、続くマリ帝国のもと、トンブクトゥはサハラ交易と宗教の拠点として発展、ソンガイ帝国時代アスキア・ムハマッドAskia Muhammad の手厚い保護のもと15世紀から16世紀にその最盛期を迎えます。
1494年、この地を訪れた旅行者アフリカヌスLeo Africanusは、「多くの医師、裁判官、聖職者、学者が王の経費により惜しみない援助を受け維持されている」と書き記し、トンブクトゥを賞賛しています。
こうしてトンブクトゥは商業と知識の中心となり、アフリカへのイスラム教公布の拠点となりました。当時、サンコーレ大学(現在モスク)を筆頭にジンガリベリ やシディ・ヤハヤなどの他100以上の学校、25,000人の学生がいました。
1591年モロッコの軍隊がトンブクトゥの都市を略奪。富を奪い、図書館を焼き払い、抵抗する多くの学者を殺し、Ahmed Baba を含む著名な学者をモロッコに送還しました。そして、この時期、ポルトガルをはじめヨーロッパ諸国が海洋ルートを開発する頃と重なり、サハラ交易の重要性はなくなりトンブクトゥは衰退していきます。その後、1960年独立までフランスの支配下に置かれます。
黄金時代のトンブクトゥでは、大量の手書きの書物が作られました。これらは北(アラブ)からの書物を書き写したものの他、当時の西アフリカ全体の情報が事細かく記され、私設図書館は120あったとも言われています。
多くの書物がモロッコの軍隊に焼き払われ、統治時代にはフランスに持ち帰られました。
写真(上)提供:kaz yoshimoto
現在、家の倉庫などに隠し残された書物は、紙の劣化や昆虫、雨、埃などによる被害を受け、時には換金目的で旅行者に売られ、その散逸、崩壊の危機に面しています。
1970年。これら手書きの文化遺産を守ることを目的とし、ユネスコの支援の下、マリ政府はトンブクトゥにアハメド・バーバ文書研究センターAhmed Baba(CEDRAB)を設立しました。現在、1万8000点が発掘され、目録の作成、デジタル化、収集・保管および修復が行われています。
また、 Mamma Haidara Memorial Libraryや Mahmoud Kati Libraryなど幾つかの家がプライベート図書館として活動しており、海外から支援を受けています。
参考)
UNESCO:The Timbuktu Manuscripts
the University of Oslo
Islamic Manuscripts from Mali
Timbuktu's Secret Treasure by Washington Post